毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護士の髪型はどこまで許される?」という話題を紹介します。
介護の仕事で髪のおしゃれは楽しめる?
時代の移り変わりとともに、変わりゆくのが髪型の流行。昭和の時代には、白髪染め以外に髪を染める人間はごくわずかで、男性が髪を伸ばしたり、パーマを掛けたりすることは珍しかったが、今や男性の長髪は珍しくなく、一度も髪を染めたことがない若者など、少数派に属するほどだ。髪型でおしゃれを楽しむ文化が育まれ、髪型のバリエーションも大幅に増えた。
ただ、社会人として働く場合には、TPOというものが存在する。
介護の仕事では金髪もOKな事業所も多いようだが、『個性的な髪型』はどこまでOKなのだろうか?
実際に老人ホームで働くスタッフに聞いてみた。
介護士の髪型はどこまで許せる?
都内の介護付き有料老人ホームで働くウエノさんは「髪の長さ」についてこう語る。
「ウチの施設には、そもそも男性の長髪に関する規定はありません。ただでさえ女性スタッフが圧倒的に多く、男性で髪が長いスタッフがいなかったので、これまで問題になったことが無いのです。
女性スタッフの中には髪が長い方はいくらでもいます。規定には『清潔に保つこと』『表情が隠れないように。髪が長い場合はまとめること』と記されているので、男性もこの規定を守ればOKだと思いますが……」
利用者さんが『イヤ』ならNGです
ただ、ヒゲが問題になったことはあり、長髪に関しても「必ずOK」というわけでもなさそうだ。
「これはルールとして明文化されているわけではありませんが、長いヒゲについては利用者から『イヤだ』という要望が複数の方から寄せられたことがありました。本人は『やっぱりダメか~』と明るい調子で言い、すぐにヒゲを剃ったため、大した問題になりませんでしたが、そう考えると、長髪も切るように求められる可能性はあるかもしれませんね」
長髪ドレッドやモヒカンの介護士がいるって本当?
一方、「介護士の奇抜な髪型も全く問題ない」というのは、都内の訪問介護事業所の場合で働くタナカさんだ。
「ウチのスタッフの中には、長髪のドレッドヘアーや、サイドを激しく刈り上げたモヒカンスタイルの男性がいます。2人ともミュージシャンの卵で、『他のバイトより勤務時間の融通が利くから』という理由で、ヘルパーをやっています。
経歴や資格が無くても、やる気さえあれば出来る介護の仕事は彼らの性に合っているようで、スタッフにはバンドマンが何人もいます」
採用面接でも髪型不問。人間性をチェック
「もちろん、採用前に面接をやりますから、非常識な人間は採用しません。でも、不衛生でさえなければ、髪型は自由です。
彼らに『髪型について何か言われる?』と聞いたことがありますが、『触ってみてもいい?』とか『切るのにいくらかかるの?』とか、好奇心で質問しても好意的に答えていますよ。
長髪の男の子は『お姉ちゃんかと思ったら、お兄ちゃんかい!』と言われたと、笑っていました。ただ、『ウチの孫だったら許さない』と言われたことはあるそうです」
髪色・髪型も相手次第。不快感がないように!
これまで介護事業所や介護付き有料老人ホームなど、介護業界で経験を重ねたハセガワさんはいう。
「髪型に関してハードルが低いのは訪問ヘルパーでしょうね。利用者にイヤだと言われたら、担当を変えてもらえば良いだけですから。
正直、学校のルールではないので、個人の資質に負うところはあると思います。同じ髪型でも、清潔感がある人もいれば、小汚く見えてしまう人もいますから、『どんな髪型でもOK』とは無条件には言えないかもしれませんね」
いささか抽象的な言い方になるが、結局は“見苦しくない範囲”ということになりそう。髪型で個性を発揮する場ではないので『何でもアリ』というわけにはいかないが、利用者さんや周りのスタッフへの配慮があればある程度の裁量は許されそうだ。