夢と希望にあふれて転職したのはいいけれど、働き始めたら違和感を感じること、ありますよね。「想像していた待遇と違う」「最初から知っていれば転職しなかったのに」などなど。転職は、自分の求める仕事内容や条件と、転職先の求めるスキル・理念などとの、マッチングが重要。
今回は、高齢者の自立を支援し、自宅への復帰をめざす「介護老人保健施設(老健)」に転職した先輩の失敗談をご紹介。介護求人ナビ編集部からのアドバイス付きです。
介護老人保健施設への転職を考えるなら、ぜひチェックしてください!
〈事例1〉入所者様の入れ替わりが激しく、じっくり向き合えないことがさみしい…
38歳/女性/ヒロ
特別養護老人ホームから、介護老人保健施設に転職。前の職場では看取りまで行っていたこともあり、時間をかけて入居者様と向き合うことができました。でも、老健では入居者様の入れ替わりが多く、とまどっています。
もっとじっくり入居者様と接したいと思いますし、退所される時はさみしさを感じてしまって…。仕事のやりがいをあまり感じられないんです。
《アドバイス》
介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰をめざした医療ケアやリハビリを行う施設です。入居期間は原則3カ月で、3カ月ごとに入所継続か退所かの判定が行われます。
他の老人ホームと比べて、入所・退所が多いことは、老健の特徴の一つです。
「終の棲家」と言われる特別養護老人ホーム(特養)と、「在宅復帰のための施設」である老健では、介護サービスも変わってきます。
特養では、入所した人の多くの人がそこで余生の最後を過ごすため、寄り添う介護が中心となります。
しかし老健は、自宅に戻ることを目的としているため、身体機能向上のためのリハビリや医療的なケアが求められます。
時間をかけて寄り添う介護をしてきたあなたにとって、老健の介護はとまどうことがあるかもしれません。
しかし入居者と一緒に「自宅に戻る」という目標に向かうことができるのは、老健ならではの醍醐味と言えます。
入居者の入れ替わりが多いことにさみしさを感じているようですが、自宅に帰れることを喜んでいる方を見ることも、介護職の喜びではないでしょうか。
すぐに転職を考えるのではなく、「あなたがやりたい介護は何か?」「高齢者とどう接していきたいか?」を、もう一度広い視点で考えてみてはいかがでしょうか。
〈事例2〉介護スタッフと医療スタッフの意識の違いや温度差に、がっかりしています
25歳/女性/ミナミ
「介護と医療の連携が密にできる」と聞き、介護老人保健施設に転職しました。でも実際はなんだかイメージと違っていて…。
医療スタッフの意見が強く、介護スタッフはそれに従う感じ。看護師は病気ばかり見て、入居者様本人を見ていないように感じます。介護スタッフに対しては、上から目線だし。
これじゃ「介護と医療の連携」なんてムリじゃないかな…。
《アドバイス》
介護老人保健施設(老健)は、病院を退院しても、すぐに自宅に戻ることは難しい高齢者に、医療ケアやリハビリを提供する施設です。
他の介護施設と比べて、より「医療」に近く、医療法人が運営していることや、病院に併設しているケースが多いことも特徴の一つ。
老健の目的は、入居者が自宅に戻ること。
そのため、看護師などの医療スタッフや理学療法士などのリハビリの専門職と、介護スタッフが連携することが求められます。
介護業界に限らず、経験や価値観の違う人たちが一緒に働く職場では、軋轢が生じがちです。老健のなかには、介護スタッフと医療スタッフの力関係が難しい職場もあり、あなたのように連携に悩む介護スタッフもいます。
また逆に、そのように多職種で働く職場をおもしろいと感じる人もいます。
同じ職場で働いていても、看護師と介護職では仕事が違いますし、価値観やめざすものも違います。
もしあなたが「看護師は入居者様を見ていない」と思っているなら、それは誤解かもしれません。
例えば、入居者が体調を崩した時、介護スタッフはまず食事や睡眠など「生活の変化」に目を向けるでしょう。しかし、看護師は症状や検査データなど「医療的な変化」に目を向けると思われます。
どちらが正しい、ということではなく、視点が違うからこそ、入居者をいろいろな面からサポートできるはずです。
まずは相手(看護師など)の視点を知るように意識してはいかがでしょうか。そしてあなた(介護職)の視点を理解してもらうための働きかけをしてみましょう。
今の職場ではどうしても難しいと思うなら、転職を考えることも一つの選択肢です。特養でも、施設により介護観などが違うように、老健も施設によって異なります。
多職種連携を意識して転職先を探す時は、面接などであなたが考えている「介護と医療の連携」を、具体的に伝えるようにしましょう。また、実際に職場を見学し、雰囲気を確認しておくことも大切です。
〈事例3〉老健に接遇は必要ない?今まで身につけた接遇スキルが無駄になりそうで…
44歳/女性/靖子
もっと医療にも関わりたいと思い、有料老人ホームから介護老人保健施設に転職しました。医療に携われるのはうれしいけれど、老健の接遇になじめなくて…。
以前の職場では、ていねいな接遇を大切にしていたのですが、今は業務に追われて接遇は二の次。せっかく身につけた接遇スキルを、老健で活かすのは無理なのでしょうか?
《アドバイス》
老人ホームや介護施設と一言でいっても、施設の種類や事業者によって、利用者の要介護度や介護の目的は違います。
比較的要介護度の低い入居者が多く、費用も高めの有料老人ホームでは、ゆとりをもった介護やていねいな接遇(利用者に接する時の対応・マナー)を重視する傾向があります。
また、要介護度の高い入居者が多い特別養護老人ホームでは、接遇よりも身体介助が中心となります。
あなたの今の職場である介護老人保健施設(老健)は、病院から自宅に戻るまでの中間施設という役割があります。そのため、病院で医療スタッフが患者に接するような対応になるところもあります。
施設の位置づけによって「ていねいな接遇」に対する重要度は違います。しかし、入居者の尊厳を守り、よりよい関係を築くために接遇が大切であることは、どの施設でも同じです。
今まで身につけた接遇スキルは、あなたの大きな財産です。また、あなたが持っている接遇へのこだわりは大切なものです。
今の職場で、あなたのめざす接遇を広げていくように働きかけてみてはいかがでしょうか。
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